道路インフラが生み出す価値を最大化しよう
2024年12月11日の水マネ大学は、お二方を講師にお招きして「道路マネジメント」について講義していただきました。
1人目の八千代エンジニヤリング 副社長の水野高志さんからは「維持管理マネジメントの現状と課題~アセットマネジメント:包括的な維持管理調達の視点から~」について、2人目の日本観光自動車道協会 代表理事会長の中川均さんからは「道路インフラマネジメント事例」についてお話しいただきました。
水野さんは、アメリカやイギリスと日本の事例を比較し、日本の道路マネジメントが欧米から20年近く遅れていると警鐘を鳴らしておられました。
また、2024年7月に改定されたアセットマネジメントに関する国際基準「ISO55000シリーズ」の改定ポイントの解説も交えながら、アセットマネジメントは「老朽化対策」つまり「老朽箇所の修繕」ではなく、「インフラの潜在力を引き出す」「インフラが生み出す価値を最大限に引き出す」ことだと強調されました。
インフラ産業はこれまで「モノ」を作ることを重視してきましたが、多くのインフラが整備された今、「モノ」を使って価値という「コト」を生み出す時代に変わっており、業界もその変化に合わせて思考改革をしなければならない。
水マネ大学では、そこを1つのゴールとしています。それが間違えていなかったと安堵しつつ、さらに加速せよと背中を押されたように感じました。
一方、水野さんの対象が「道路法上の道路」であったのに対し、中川さんの対象は「道路運送法上の道路」です。道路運送法上の道路というのは、完全に民営化されている道路のことで、中川さんが実際にマネジメントされていた白糸ハイランドウェイでの経験に基づく実例を紹介いただきました。
水野さんの講義と比べ、対象となる道路は法律上も異なりますし、管理者も官と民で異なりますが、マネジメントの要は「モノ」ではなく、モノが生み出す「コト」だという考え方は共通していました。
ですが、中川さんも現場を任された当初は、穴が開いていないなど「モノ」としての道路の性能を追求したそうです。ですが、利用者から寄せられる苦情のほとんどはモノのことではなく「近所のおすすめの食堂を知らなかった」とか「態度が悪かった」など従業員に関するものばかり……。
それがきっかけで「道路は単に通過するためのモノではない。道路を通りながら景色を見て、ハッピーになってもらう(=経験というコト)ためのツールである」と考え方が変わったそうです。そんな道路にするために、ワークショップを開いて関係者と思いを共有するなど、利用者目線を徹底するようになったそうです。
お二人が持つインフラマネジメントの理念や考え方は、水インフラなど道路以外のインフラにも大いに参考になります。受講生にも思考改革が起こったようです。
インフラマネジメントについて詳しく知りたい方はぜひ水マネ大学2025年度で仲間になってくださいね。