【寄稿】「水インフラマネジメント大学」講師を終えて:東京大学 加藤裕之氏

一般社団法人Water-nが主催する「水インフラマネジメント大学」(水マネ大学)が2021年4月からスタートしました。「オソト×水インフラ」をコンセプトに、多様な分野の先駆者やオピニオンリーダーを講師にお迎えし、水インフラ産業の変革、新規事業につながる中身の濃いオンライン講義が行われています。

その第2回目の講義(2021年4月28日)で講師を務めていただいた東京大学下水道システムイノベーション研究室の加藤裕之特任教授から「水マネ大学」についてご寄稿をいただきましたので紹介いたします。


「水インフラマネジメント大学」で講義をする加藤裕之氏(画面キャプチャ)

水インフラマネジメント大学の第2回の講師を、2021年4月28日に務めさせていただきました。水マネ大学では、マネジメントのために必要となる人材育成を目的として、様々な分野の有識者による講義とディスカッションが行われています。

私は「イノベーション理論」と「リーダーシップ論」について講義しました。次の調和の前の混沌とした時期にある水事業にとって、最も必要なのは、この2つであると確信しており、こちらからテーマを設定させていただきました。

まず、講義で感じたのは、WEB画面に並ぶ生徒の皆さんから感じる迫力でした。私から投げかける質問に対しても、必ず誰かがレスポンスします。そして、レスポンスに対してさらにレスポンスが連鎖していく。

日頃行っている様々の講演と違うこの空気感はなんだろう?と考えてみましたが、その理由の1つは、様々な組織からの参加によるものではないかと思っています。

様々な企業から、多様な業務に従事している者が、同じ教室で水マネジメントについて貪欲に学習し、他社の社員とも議論すること。そこには、各人が属してする組織のプライドや文化の違いによる「目に見えない」コンフリクトがあります。まさに「創造的摩擦」の場です。

講義終了後は、久しぶりに私も充実感と爽やかな気持ちになりました。水マネ大学で勉強された様々な生徒が、自分自身の新たなチャレンジのスタートを切るとともに、めまぐるしく動く業界のリーダーとして競争と協調を行うことで、新たな調和のステージを創造していくことを期待してます。

なお、講義でお話ししたイノベーション理論などについては、拙著「コンセプト下水道」(2021年5月31日発刊)をご参照いただけばと思います。


「コンセプト下水道」(公共投資ジャーナル社発行、税込1,650円)
東日本震災現地支援リーダーとして現場経験からの教訓を記した「戦略と戦術」、市民の信頼を得るための要素を記した「信頼学」、雨水管理の四つのコンセプトなど、著者が実体験からたどり着いたコンセプトや思考法がまとめられています。